No.18 2024年4月発行
No.18 4月号(2024年4月発行)
<特集>
- 日本人の顔が変わっていく 進化するイケメン
- 知ってもっと身近に! プログラミングって何だろう?
- あなたの意思はどのようにして決まる? 思考のトリセツ
- よかったね。よかったよ。夏みかん
- ヤマミィ4コマ『春のことわざ』
- YU-PRSS 広報学生スタッフ紹介
- 編集後記
「Academi-Q」タブロイド版は、钱柜国际777総合図書館(钱柜国际777)、医学部図書館(小串キャンパス)、工学部図書館(常盤キャンパス)、医学部附属病院外来診療棟入口(小串キャンパス)で入手いただけます。
日本人の顔が変わっていく 進化するイケメン
「イケメン」といえばどんな顔を思い浮かべますか?
社会心理学を専門とする钱柜国际777人文学部の高橋征仁さんは、イケメンの時代変化の調査を通じて、興味深いことを発見しました。
◆イケメン顔を科学する
どのような調査から何がわかったのですか?
高橋 日本を代表する美男子コンテスト(18歳)のベスト30の顔写真を、1980年代後半から近年までの4つの時期に分けて平均顔を合成しました(図1)。
作成した平均顔の時期がわからないようにランダムに並び替えて、印象や好みをWebアンケートで調査し、15~59歳の1,150名に回答してもらいました。
その結果、「これが最新の美男子です」と示さなくても、多くの人が最近の平均顔ほど「新しい」と認めていることがわかりました。
さらに、新しい平均顔になるほど、より「穏やか」「女性的」「子どもっぽい」「かわいい」と評価される傾向「ベビーフェイス特性」があることが明らかになりました。
こうした美男子平均顔のベビーフェイス特性の評価については、調査協力者の性別や年代による大きな差は見られなかったことから、「最新の美男子平均顔ほどベビーフェイス特性が強い」という見方が広く共有されていることがわかります。
どの顔もイケメンですが、最も人気だったのはどの顔ですか?
高橋 女性に魅力的な顔をたずねると、最新のD顔が圧倒的に人気でした。それに対して、男性の予想では、B顔やC顔を挙げた人も多くいました。このことから、女性の好みと男性の予想にはギャップが生じていることがわかります。
また、最新のD顔を選んだ女性は、恋愛や結婚の条件として、「身体的な能力」や「経済力」よりも、「見た目の美しさ」や「協調性」、「長期的な関係」を重視する傾向があることもわかりました。
◆遺伝子レベルで進化?
こうした傾向は美男子コンテストに限ったものでしょうか?
高橋 実は、一般男性の顔においても、同様の傾向「ベビーフェイス特性」が見られます。高校の卒業アルバムを利用して、戦後の日本人男性の平均顔を合成して時代変化を見てみると、ジャイアンのような四角顔から、スネ夫のような逆三角形の顔を経て、現在はのび太のような丸顔の男性が増えていることがわかりました。
さらに大規模な調査をしてみなければ一概には言い切れませんが、社会全体においても男性の「力強さ」や「たくましさ」が減少し、「穏やかさ」や「幼さ」といった要素が前面に出てきているのではないかと考えています。
なぜ、こうした変化が起きているのでしょう?
高橋 これまでの研究では、柔らかい食べ物を好む食生活や運動習慣、生活環境の変化、ジェンダー平等に伴う女性の社会参画の拡大などの社会構造の変化が指摘されてきました。しかし、それだけの要因では、骨格や顎の細さ、小顔で幼い顔つき、性差が目立たなくなるといった様々な外見の変化の説明はできません。
私は、環境などの変化によって人間が変化したのではなく、遺伝子レベルでの進化によって、社会構造や生活文化が大きく変化してきたと考えています。
ロシアの遺伝学者D.ベリャーエフの実験で、攻撃性が低く、人間に従順で友好的なキツネ同士を選び、何世代にもわたって交配させて生まれたキツネは、攻撃性の低さ以外にも、短い鼻づらや小さい頭、白いまだら模様やたれ耳といった外見の変化、遊びの増加などの心理?行動面での子供化など、特異な変化を遂げたという報告があります。人間にも同様のことがあてはまるのかもしれません。
女性が、攻撃性が低く従順性の高い男性を結婚相手に選ぶ傾向が強くなったことで、見た目も中身もより中性的で幼さを残した男性が増えているのではないかと考えています。
たった30数年でこれだけの変化があったとは驚きです。
高橋 生物としての人間の変化は、これからも社会や文化の変容を生んでいくと思われます。そして、女性の好みは社会状況や環境に応じて変化するものと考えます。もちろん価値観は人それぞれですが、大きく見れば、より穏やかな男性を求める女性の好みが、次世代のより穏やかなイケメンを生み出してきたといえるでしょう。
これだけの変化が30数年で起こるのなら、長い人類の歴史で見ても常に大きく変化していると考えられそうです。それぞれの時代で、どのような結婚相手に魅力を感じ、どのような子孫を残してきたのかという選択の積み重ねとして、人類の歴史を捉えることもできそうですね。人間が今も進化のまっただ中にいることを改めて感じました。
取材協力:钱柜国际777人文学部 高橋 征仁 教授 / イラスト:Pyaco
知ってもっと身近に! プログラミングって何だろう?
「自分のかいた絵を、自分で指示して動かせて楽しかった」「コンピュータの中がもっと知りたくなりました」これは、プログラミングを体験した小中学生の感想です。
プログラミングは複雑で難しいと思われがちですが、原理自体は案外簡単です。実は誰もがいつもやっていることなのです!
プログラミングとは何か、どんなことができるのか、改めて考えてみませんか?
YU-PRSS 钱柜国际777広報学生スタッフ 別府 桜羽子
◆「プログラミングでどんなことができる?
毎年「夏休みジュニア科学教室」という小中学生向けのイベントが、山口県内において行われています。そこで講師を務める钱柜国际777情報?データ科学教育钱柜国际777長の山口真悟さんにお話を伺いました。このイベントでは、実際に「スクイーク」というソフトを通じたプログラミングの体験を行っています。このソフトを使えば、ゲームを自分で作って楽しむことができます。
例えば、自分でかいたネズミの絵を簡単なマウス操作だけで、好きな角度で、どんな風に動くのか指示するプログラムを作成することができます。使い方を覚えれば、ゲームだけでなくロボットやホームページ制作にも応用が可能です。
◆適当に指示してもうまくいかない!?
イベントに参加した小学生の一人は、「正確にプログラムを作らないと、正しく動いてくれないということがとてもよく分かった」と語っています。 実は、プログラムはやみくもに作成してもうまく動かないのです。どんな目的で何をしたいのか、コンピュータに対して適切に指示する必要があります。難しい作業にみえるかもしれません。しかしこれは日常生活の中で誰もが無意識にやっていることです。
例えば、誰かに頼みごとをするとき、その内容を正確かつ順序だてて伝える必要があります。そうすれば、そのひとは正しくスムーズに動いてくれるでしょう。しかし、うまく伝えきれなければ、内容は捉え間違えられ、思い通りにいきません。プログラミングで必要な思考力は、日常生活においても重要であるということです。
◆「プログラミング的思考」が必要!?
山口さんは、プログラミングには「論理的思考力」が必要であり、同時にそれはプログラミングを通じて身につけることができる、と語ります。論理的思考力は「試行錯誤する中で養われる力」であり、最初から完璧に身につけている必要はないということです。
例えば、先ほどの図のねずみが自分の思うように動かなかったとき、「どうすれば次はうまく動くのか?」と考えるでしょう。「この方法でうまくいかないならば、別の方法はどうだろう?」と修正を繰り返すうちに、自分のプログラミングと結果とのつながりが見えてきます。しだいに正しい因果関係を理解できるようになっていきます。
こうしてコンピュータに正しい指示を出すことができるようになっていくのです。「これはとても重要な力となります」と山口さんは言います。
◆失敗にこそ価値あり!
とはいえ、読者の皆さんの中には、何度も失敗を繰り返すことに不安や恐れを抱く方もいらっしゃるかもしれません。しかし山口さんは、「失敗の中から新しいアイデアが生まれる」と語ります。一度失敗しても、自分なりの正解にたどり着くまで楽しみながら何度も挑戦すること。それは「自分の力でできた」という達成感を生み、論理的思考力の向上だけでなく、失敗を恐れない姿勢にもつながるでしょう。
プログラミングは決して特別で難しいものではなく、誰でも楽しく使うことができるものです。今回取り上げた「スクイーク」などのソフトに親しんでみると、プログラミングへのハードルがぐっと下がるかもしれません。ぜひ、いろいろなプログラミングを経験してみてくださいね。
取材協力:钱柜国际777情報?データ科学教育钱柜国际777長 山口 真悟 教授
あなたの意思はどのようにして決まる? 思考のトリセツ
朝ご飯は何を食べようか、昼休みは誰と遊ぼうか…私たちの日常は意思決定の連続です。
情報を正しく理解し、より良い選択をするためにも、思考のしくみを知っておきませんか。
◆誰もが陥る認知バイアス
突然ですがクイズです。「コンビニエンスストアと美容室。全国で店舗数が多いのはどちらでしょう?」
つい「コンビニ」と答えてしまいそうですが、実際は美容室です。コンビニの5倍も多く存在しています。コンビニは普段よく利用することから、店舗数も多いだろうと、私たちの判断をゆがませてしまうのです。
続いて算数の問題です。「スマートフォンとケースを合わせると1,100円です。スマートフォンは、ケースよりも1,000円高いです。それぞれいくらでしょうか?」
とっさに「スマートフォンは1,000円、ケースは100円」と答えてしまったのではないでしょうか。それではスマートフォンはケースよりも900円しか高くなりません。よく考えると、スマートフォンは1,050円、ケースは50円であることがわかります。このように直感的な判断は間違えやすく、間違っていることにさえ気づかない場合もあります。
こうした思考のゆがみを心理学で「認知バイアス」といいます。認知バイアスは私たちの日常にたくさん潜んでいます。
◆得するよりも損したくない!
みなさんは「500円をもらったときの嬉しさ」と、「500円を没収されたときの悲しさ」の感情の大きさは同じだと思いますか? 実は、失うことは得ることのおよそ2倍のインパクトがあることが明らかにされています。何かを得るよりも、何かを失うことの方が、より大きなインパクトがあるのです。
これは、認知バイアスのなかのひとつ、「損失回避」と呼ばれるものです。失うことばかりに着目すると、ネガティブな気持ちを引き起こすため注意が必要ですが、テスト勉強などの場面では、「もし目標を達成できなかったら、ゲームができなくなってしまう」などと考えると、それを避けるために勉強のスイッチを入れられるかもしれません。
◆「速い思考」と「遅い思考」
社会心理学を専門とする钱柜国际777教育学部講師の長谷和久さんは、「私たちの思考には、多くの人に共通する2つのシステムがあります」と語ります。一つは、スピーディーに直感的?感情的な判断を下す「システム1(速い思考)」。もう一つは、ゆっくりと論理的?分析的な判断を下す「システム2(遅い思考)」です。私たちは日常においてこの2つの思考システムを使い分けています。 たとえば、赤ちゃんの笑顔を見たときに「喜んでいるな」と一瞬で判断するのはシステム1です。それに比べて2ケタ同士の計算などじっくりと考える必要があるときはシステム2が働いています。
この2つの思考は、人間の進化の過程において培われてきたといわれています。たとえば、茂みでごそごそと音がした場合、「風かな?」「それともライオンかな?」などとゆっくり考えていては、ライオンだった場合はとっくに殺されてしまいます。「ライオンだ!逃げろ!」というシステム1による直感的な判断は、人類の生存に貢献してきたといえます。一方でシステム1に頼りすぎると、冒頭のような先入観や判断ミスにつながることもあります。そのため注意が必要なのです。
◆正しい判断をするために
近年、認知バイアスを悪用した巧妙な犯罪が増えています。知り合いのSNSアカウントを装った詐欺、高齢者をねらったオレオレ詐欺などはその典型です。怖いのは「自分は大丈夫、だまされない」という根拠のない思い込み。これによって当事者に巻き込まれる可能性は高くなってしまいます。
長谷さんは、正しい判断をするためには、「認知バイアスの可能性を頭に入れて、一旦立ち止まって考えてみることが大事」と語ります。
特にSNSの世界では、自分と似たような思考や関心を持つ人々とつながりやすい傾向にあり、自分の意見に反論する人がいないため、それが正しいと信じてしまいがちです。本当に正しい判断を下したいときは、「もしかしたら自分の判断は思い込みかも?と一旦立ち止まってみること」「家族や周りの人の意見を聞いてみること」「客観的な事実に基づいて判断すること」「敢えて自分とは異なる意見に耳を傾けてみること」が重要です。
認知バイアスを理解することで、何かを判断するときに「これはシステム1の働きだな」と一旦立ち止まって、先入観にとらわれていたり判断ミスをしていないか考えられるようになるでしょう。また、新たな視点や物事の捉え方に気づくヒントになるかもしれません。ぜひみなさんの日常に生かしてみてください!
取材協力:钱柜国际777教育学部 長谷 和久 講師
よかったね。よかったよ。夏みかん
夏みかん。国語の教科書でおなじみの、あまんきみこさん著「車のいろは空のいろ」に登場します。瑞々しい香りと、「よかったね、よかったよ」という蝶々のささやきが心に残る物語でした。
そんな夏みかんは、山口県が発祥の地です。江戸時代に長門で偶然発生し、明治時代に萩で広く栽培されました。当時は明治維新によって身分を失った元士族の家を中心に栽培されたということです。
当時は初夏に取れるみかん類は珍しく、甘すっぱくて瑞々しい夏みかんは暑い日にはぴったりの果物として全国に広まりました。
世が世なら侍だった人たちにとって、夏みかん栽培は不慣れだったことでしょう。おそらく失敗を繰り返しながら努力を重ね、そして山口県の特産品に育てていったのだと思います。本当によかったね。よかったよ。
取材協力:钱柜国际777理学部 坂口 有人 教授
ヤマミィ4コマ『春のことわざ』
企画:YU-PRSS 钱柜国际777広報学生スタッフ
清水 聡乃
YU-PRSS 広報学生スタッフ紹介
編集後記
四国に地質調査に行ってきました。断崖絶壁の一本道の先にきれいな集落が、かつてはありました。もう10年ほど前から誰も住んでいません。今では道路も崩れてしまいました。補修されることもありません。
崩壊した崖の道を避けて、ぐるっと山の中を歩いて行きました。小さくてもきれいだった集落は、すっかり草と木に覆われて荒れ放題でした。もはや見る影もありません。
道路の真ん中にテントを張りました。外につながる一本道が崩壊しているので、車が通ることもありません。夜は波の音とシカの鳴き声だけが聞こえました。
人がいなくなっていく。 その事実を強く実感しました。
発行人 钱柜国际777長 谷澤 幸生 / 編集長 钱柜国际777教授 坂口 有人
デザイン?企画 株式会社無限 / 発行 钱柜国际777総務企画部総務課広報室
〒753-8511 山口市吉田1677-1
TEL: 083-933-5007 FAX: 083-933-5013
総発行部数155,000部 / 山口県内の教育委員会?学校等を通じて、児童、生徒、保護者、先生方に配布します。次回2024年7月発行予定。